営業所技術者等は主任技術者・監理技術者を兼務できる?職務の特例を解説【建設業の技術者制度 第4部(全4部)】

営業所技術者等は現場技術者を兼務できる?「営業所+現場」の職務の特例を解説

建設業許可を受けた建設業者は、営業所ごとに、許可を受けようとする建設業について一定の資格・経験を有する「営業所技術者」または「特定営業所技術者」を置く必要があります。

一方、実際に建設工事を施工するときには、工事現場に主任技術者または監理技術者を配置しなければなりません。

ここで実務上よく問題になるのが、「営業所技術者等が、工事現場の主任技術者・監理技術者を兼務することはできるのか?」という問題です。

営業所技術者等は、営業所に常勤して専らその職務に従事することが原則ですが、一定の要件を満たす場合には、工事現場の主任技術者・監理技術者の職務を兼ねることが認められています。

特に令和6年12月13日施行の建設業法改正により、一定の要件を満たす場合には、専任が必要な工事についても営業所技術者等が現場技術者を兼務できる制度が設けられました。

この記事では、建設業の技術者制度シリーズ最終回として、営業所技術者等と主任技術者・監理技術者の兼務について整理します。

目次
  1. そもそも「営業所技術者等」とは?
  2. 営業所技術者等は主任技術者・監理技術者を兼務できる?
  3. 兼務できる場合は大きく3つに分けて考える
  4. 専任が必要な工事を兼務する「営業所技術者等の職務の特例」
  5. 兼務できるのは「営業所+1現場」
  6. 移動時間は「現場から現場」ではなく「営業所から現場」
  7. 1億円・2億円未満なら自動的に兼務できるわけではない
  8. 専任を要しない工事の場合はどうなる?
  9. 専任特例1号と営業所技術者等の職務の特例は別制度
  10. 実務で間違えやすいポイント
  11. 営業所技術者等と現場技術者の兼務を判断する流れ
  12. まとめ|「営業所」と「工事現場」を分けて考えることが重要

1.そもそも「営業所技術者等」とは?

現在の建設業法では、一般建設業許可と特定建設業許可とで、営業所に置く技術者が区別されています。

建設業許可営業所に置く技術者
一般建設業営業所技術者
特定建設業特定営業所技術者

この2つをまとめて「営業所技術者等」といいます。

営業所技術者等は、営業所に常勤して専らその職務に従事することが求められています。なお、一定の条件を満たすテレワークについても、監理技術者制度運用マニュアルでは常勤に含まれるものとして整理されています。

営業所技術者等と現場技術者は役割が違う

営業所技術者等は、建設工事の請負契約を締結する「営業所」に置かれる技術者です。これに対して、主任技術者・監理技術者は、実際に建設工事を施工する「工事現場」に配置される技術者です。

営業所 → 営業所技術者等
工事現場 → 主任技術者・監理技術者

まず、この2つの役割を分けて考えることが、兼務制度を理解する第一歩です。

2.営業所技術者等は主任技術者・監理技術者を兼務できる?

結論からいうと、一定の要件を満たせば兼務できる場合があります。

ただし、営業所技術者等であれば誰でも、どの工事現場でも自由に兼務できるわけではありません。

さらに重要なのが、営業所技術者と特定営業所技術者では、兼務できる現場技術者の範囲が異なることです。

営業所側の立場兼務できる現場技術者
営業所技術者主任技術者
特定営業所技術者主任技術者または監理技術者

※実際に兼務できるのは、営業所技術者等が当該工事について主任技術者または監理技術者となるために必要な資格要件等を満たしている場合に限られます。

したがって、一般建設業の営業所技術者が、単に「営業所技術者である」という理由だけで監理技術者を兼務できるわけではありません。

3.兼務できる場合は大きく3つに分けて考える

営業所技術者等が現場技術者を兼務する場合の3つの類型

営業所技術者等と現場技術者の兼務を理解するときは、次の3つの場合に分けて考えると分かりやすくなります。

区分工事現場
①主任技術者・監理技術者の専任が必要な工事
②専任を要しない工事で、営業所と工事現場が近接している場合
③専任を要しない工事で、②以外の場合

この3つは、それぞれ適用される要件が同じではありません。また、国土交通省の監理技術者制度運用マニュアルでは、①~③を併用することはできないとされています。

4.専任が必要な工事を兼務する「営業所技術者等の職務の特例」

令和6年12月13日から、建設業法第26条の5により、一定の要件を満たす場合には、営業所技術者等が専任を要する工事現場の主任技術者・監理技術者を兼務することが可能になりました。

ただし、これは「営業所技術者等なら1現場まで自由に兼務できる」という制度ではありません。所定の要件をすべて満たす必要があります。

専任工事を兼務するための主な要件

要件内容
契約営業所営業所技術者等が置かれている営業所で請負契約を締結した工事であること
兼務現場数兼ねる工事現場の数が1以下であること
請負代金額1億円未満(建築一式工事は2億円未満)
移動時間営業所から工事現場まで、1日で巡回可能かつ移動時間がおおむね片道2時間以内
下請次数3次まで
連絡員工事現場に、連絡その他必要な措置を講ずるための者を配置
施工体制の把握施工体制を情報通信技術を利用する方法により確認できる措置を講ずる
人員配置計画営業所・工事現場等の人員配置を示す計画書を作成し、所定の方法で保存する
現場確認映像・音声の送受信により工事現場の状況を確認できる環境を整える
雇用関係営業所技術者等が所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること

これらは、請負代金額だけを確認すればよいという制度ではありません。移動時間、下請次数、連絡員、ICT、人員配置計画などを含めて、要件を一つずつ確認する必要があります。

連絡員にも注意

連絡員は、監理技術者等が工事現場を離れている場合などに、現場側で連絡その他必要な措置を講ずるための者です。

土木一式工事または建築一式工事の場合には、その建設工事の種類に関する1年以上の実務経験を有する者であることが必要です。その他の業種では同じ資格・実務経験要件は設けられていませんが、連絡員の職務を踏まえて適切な者を配置する必要があります。

5.兼務できるのは「営業所+1現場」

営業所技術者等の職務の特例は一定の要件を満たす場合に営業所と1つの工事現場を兼務する制度

ここは、第3部で説明した専任特例1号と非常に混同しやすいところです。

専任特例1号では、一定の要件を満たすことにより、主任技術者・監理技術者が2つの工事現場を兼務できます。

一方、営業所技術者等の職務の特例では、営業所で営業所技術者等として職務に従事しながら、工事現場を1現場まで兼務するという構造になります。

専任特例1号 → 現場+現場
営業所技術者等の職務の特例 → 営業所+現場

「1現場まで」と「2現場まで」を混同しない

営業所技術者等の職務の特例で兼ねることのできる工事現場数は、1以下です。営業所技術者等は、すでに営業所での職務を担っています。そのうえで工事現場の職務を兼ねるため、基本的な構造は「営業所1か所+工事現場1か所」となります。

6.移動時間は「現場から現場」ではなく「営業所から現場」

これも第3部の専任特例1号との重要な違いです。専任特例1号では、兼務する2つの工事現場について移動時間を確認します。

これに対して、営業所技術者等の職務の特例では、営業所から工事現場までの移動時間で判断します。

監理技術者制度運用マニュアルでは、専任特例1号の移動時間要件にある「他の建設工事現場から当該工事現場」を、営業所技術者等の場合には「営業所から当該工事現場」と読み替えることが明記されています。

営業所 → 工事現場:1日で巡回可能かつ、おおむね片道2時間以内

したがって、第3部の「現場間の距離」の考え方を、そのまま営業所技術者等の兼務に当てはめないよう注意が必要です。

7.1億円・2億円未満なら自動的に兼務できるわけではない

専任を要する工事について営業所技術者等が現場技術者を兼務する場合、対象となる工事の請負代金額は、

  • 建築一式工事以外:1億円未満
  • 建築一式工事:2億円未満

である必要があります。しかし、この金額を下回っているだけで兼務できるわけではありません。

移動時間、下請次数、連絡員、ICT、人員配置計画など、先ほど説明した要件をすべて確認する必要があります。

また、工事途中の契約変更などによって請負代金額が基準以上となった場合には、この特例による兼務を継続できなくなることがあるため注意が必要です。

8.専任を要しない工事の場合はどうなる?

ここまで説明したのは、専任が必要な工事について営業所技術者等が主任技術者・監理技術者を兼務する場合です。

では、そもそも専任を必要としない工事ではどうでしょうか。

監理技術者制度運用マニュアルでは、専任を要しない工事について、さらに2つの場合に分けています。

営業所と工事現場が近接している場合

専任を要しない工事で、工事現場の職務に従事しながら実質的に営業所の職務にも従事できる程度に営業所と工事現場が近接している場合には、一定の要件を満たすことで兼務が認められます。

  • 営業所技術者等が置かれている営業所で請負契約を締結した工事であること
  • 工事現場と営業所が、実質的に双方の職務に従事できる程度に近接していること
  • 営業所との間で常時連絡を取れる体制にあること
  • 所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること

営業所と工事現場が近接していない場合

専任を要しない工事であっても、上記の「営業所と工事現場が近接している場合」に該当しないケースがあります。この場合、監理技術者制度運用マニュアルでは、専任工事を兼務する場合と同様の要件をすべて満たすことによって兼務できる仕組みが示されています。

「専任を要しない工事だから、営業所技術者等が無条件で兼務できる」というわけではありません。

9.専任特例1号と営業所技術者等の職務の特例は別制度

専任特例1号と営業所技術者等の職務の特例の違い

第3部を読んでいただいた方に、特に押さえていただきたいところです。

確認項目専任特例1号営業所技術者等の職務の特例
基本的な兼務工事現場+工事現場営業所+工事現場
対象者主任技術者・監理技術者営業所技術者・特定営業所技術者
工事現場数2現場まで1現場以下
請負代金額1億円未満/建築一式2億円未満1億円未満/建築一式2億円未満
移動時間工事現場間営業所から工事現場
下請次数3次まで3次まで
連絡員必要必要
ICT必要必要
人員配置計画必要必要

要件には共通する部分が多いため混同しやすいのですが、「誰が、どことどこを兼務する制度なのか」が違います。

さらに重要なのが、監理技術者制度運用マニュアルでは、営業所技術者等の兼務について「専任特例を活用する場合を除く」とされ、3つの兼務類型についても併用できないと整理されていることです。

したがって、営業所技術者等の職務の特例と専任特例を重ねて使い、兼務できる範囲をさらに広げるという考え方はできません。

10.実務で間違えやすいポイント

  • 「営業所技術者等だから現場技術者を兼務できない」と一律に判断しない
  • 「1億円未満なら自由に兼務できる」と判断しない
  • 営業所技術者と特定営業所技術者では、兼務できる現場技術者の範囲が異なる
  • 「現場+現場」と「営業所+現場」を混同しない
  • 専任を要しない工事であっても、無条件で兼務できるわけではない
  • 一つの条件だけではなく、適用される要件を総合的に確認する

特に専任工事を兼務する場合には、契約した営業所、工事現場数、請負代金額、移動時間、下請次数、連絡員、ICT、人員配置計画、直接的かつ恒常的な雇用関係などを個別に確認する必要があります。

「営業所と現場が近いから大丈夫」「金額が基準未満だから大丈夫」と、一つの条件だけで判断しないことが重要です。

11.営業所技術者等と現場技術者の兼務を判断する流れ

営業所技術者等と現場技術者の兼務可否を判断する流れ

実務では、次の順番で確認すると整理しやすくなります。

  1. その人が営業所技術者なのか、特定営業所技術者なのかを確認する
  2. 兼務しようとする現場で主任技術者なのか、監理技術者なのかを確認する
  3. その工事が専任を必要とする工事かを確認する
  4. 営業所技術者等が置かれている営業所で請負契約を締結した工事かを確認する
  5. 専任工事の場合は、1億円未満(建築一式2億円未満)などの特例要件をすべて確認する
  6. 専任を要しない工事の場合は、営業所と現場が近接するケースか、それ以外かを確認する
  7. 他の専任特例等を利用していないかを確認する

この順番で確認すると、「営業所技術者だから兼務できる/できない」と最初から結論を出してしまうことを避けられます。制度上は、工事の専任の要否や営業所との関係によって、適用される要件が異なります。

12.まとめ|「営業所」と「工事現場」を分けて考えることが重要

営業所技術者等と主任技術者・監理技術者の兼務は、一見すると複雑ですが、まず「営業所での役割なのか」「工事現場での役割なのか」を分けて考えると理解しやすくなります。

営業所技術者等は、原則として営業所に常勤して専らその職務に従事しますが、一定の要件を満たす場合には、工事現場の主任技術者・監理技術者の職務を兼ねることができます。

特に令和6年12月13日からは、建設業法第26条の5により、ICTの活用など一定の要件のもとで、専任を必要とする工事についても営業所技術者等が現場技術者を兼務できる制度が施行されています。

ただし、兼務の可否は単に請負代金額だけで判断できるものではありません。工事を契約した営業所、兼務する現場数、営業所から現場までの移動時間、下請次数、連絡員、ICT環境、人員配置計画、雇用関係などを総合的に確認する必要があります。

専任特例1号 →「現場+現場」
営業所技術者等の職務の特例 →「営業所+現場」

全4部を通して、技術者制度を一つにつなげて考える

この「建設業の技術者制度」シリーズでは、第1部から第4部まで、営業所技術者等、主任技術者・監理技術者、施工管理技士・技士補、実務経験、専任、専任特例、そして営業所技術者等と現場技術者の兼務まで順番に整理してきました。

それぞれ別々の制度に見えますが、実際の建設業許可や工事現場の技術者配置では相互に関係しています。「どの資格を持っているか」だけではなく、「営業所なのか現場なのか」「主任技術者なのか監理技術者なのか」「専任が必要なのか」「特例を利用できるのか」という順番で整理することが重要です。

第3部|主任技術者・監理技術者の「専任」と専任特例を確認する

第3部では、主任技術者・監理技術者の「専任」、専任特例1号・2号、監理技術者補佐について詳しく解説しています。

前の記事 第3部 主任技術者・監理技術者の専任と専任特例1号・2号

建設業の技術者制度|全4部

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